研究発表。
それは自分の研究を、他の人々に知ってもらうための貴重な場です。
しかし、自分の研究の全てを限られた時間の中で知ってもらうことは不可能です。
自分の研究の重大さ、優れた成果を知ってもらうためには、発表を工夫する必要があります。
そこで、今回は研究発表における資料作りのポイントをまとめました。
発表全体
まずは発表全体を通して注意しなくてはいけない点です。
これらは、資料作りにおいて最初から最後まで通して重要となるポイントになります。
最初にチェックしましょう。
ストーリー構成
研究発表のストーリー構成はある程度テンプレートがあります。
基本は、そこから外れないようにするべきです。
テンプレートとしては、以下のような流れになるでしょう。
- 背景
- 課題
- 目的
- 方法
- 方法の詳細
- 実験or評価
- 結論
もちろん、自分の研究の見せ方によってアレンジは必要でしょうが、まずはここから始めるべきです。
研究のテーマの重要性を述べる
発表全体を通して、自分の研究がいかに重要かを理解してもらう必要があります。
そのためには、
- 自分の研究における一番のポイントが言える
- 自分の研究の社会的意義が言える
- 自分の研究の学術的意義が言える
これらのことがポイントとなります。
自分の研究の社会的・学術的意義は、背景と課題の部分でしっかりと提示しましょう。
また、自分の研究のポイント(新規性・重要性・アイデア)をきちんと述べられるようにしましょう。
研究の技術的な難しさ・貢献を述べる
研究の技術的な難しさをアピールできていることは重要です。
なぜなら、簡単にできてしまう(自明である)ことは研究にはならないからです。
自分のやってきたことが、これだけ困難なことだったんだということは主張しなくてはなりません。
方法の詳細などは、これをアピールするのに重要なセクションでしょう。
具体的な方法の中で、どの部分が難しくて、どのような工夫をしたのかをきちんと話す。
時間が短い場合は、そういった重要なポイントに絞って話すのもいいかもしれません。
また、貢献をきちんと述べておくというのもいいでしょう。
自分がこの研究によってどんな貢献をしたのか主張することは、発表を通してなにに焦点を当てたらいいのか明確になる意味で非常に効果的です。
専門用語の定義
発表内容を理解する上で必須となる専門用語の定義は、明示しなくてはなりません。
できるだけ具体的な解説をするように心がけましょう。
「知っているのが当たり前」というスタンスではなく、むしろ知らないことが普通だと思った方がいいです。
専門用語がわからないというだけの理由で、発表を聞いてもらえなくなるのはもったいないことですよ。
用語の統一
これは、聞き手に伝わりやすくするためのポイントであり、自分が正しいことを言っているというアピールのための意味もあります。
同じことを指す用語なのに、複数の言い方をしてしまうと伝わり辛いですし、本当にわかっているのか?と思わせてしまいます。
発表内での用語はきちんと統一しましょう。
1枚のスライドで伝えることは1つまで
これは伝わりやすさの問題です。
1つのスライドに様々な情報を盛り込みすぎると、結局何が言いたいのか全く伝わりません。
伝えたいことを絞り、その上で情報を書き出していくようにしましょう。
1枚のスライドで伝えることは1つまでです!
スライド同士のつながりを意識する
スライドとスライドの間であまりにも話にギャップがあると、聞いている側からは何がなんだかわかりません。
そうならないよう、スライド同士のつながりを意識してください。
これは、実際にどうやって説明するのかを、口に出したりしながら資料を作るとよくなっていきます。
自分で説明していて「繋がっていないな」というように思ったら絶対に修正するようにしましょう。
背景と問題
背景と問題は、自分の研究の社会的・学術的意義を示すためのセクションです。
また、発表の冒頭でもあります。
冒頭であるということは、その発表が聞く価値のあるものか判断される部分ということです。
つまり、ここで興味を持ってもらわなくては、自分のやったことがどれだけ優れたことであってもわかってもらえないわけです。
1枚目のスライドの重要性
冒頭の中でも1枚目のスライドは最も重要であり、最も難しいポイントです。
多くの人に聞いてもらおうと思ったときに、注意すべきポイントは大きく分けて2つ。
- 分野を問わず誰にでもわかる内容であること
- 興味を引く内容であること
これが重要となります。
つまりはこの部分では、社会的意義を述べるべきということになりますね。
この時点で学術的意義を述べられても、その領域に特化した人しかわかりません。
また、学術的意義が出てくるのは、その領域のなかでもさらに狭い領域の話ですから、この時点で興味を引くというのも難しいでしょう。
そうではなく、広く社会的に意義があることをアピールした方が、面白みも出てくるというものです。
成果をアピールするための例
成果をアピールするためには、課題が明確になっていることが重要となります。
特に、課題は具体的にどういうことなのか見えていた方が伝わりやすいものです。
ここに課題があるんだ、という例を用意すべきでしょう。
また、この例は発表を通してできるだけ共通したものを用いるようにしましょう。
つまり、この時の例を用いて、研究成果による解決を見せることができるのが望ましいということです。
目的と方法
目的と方法は、自分の研究のポイント・思想・詳細を語る部分です。
背景・問題の流れに沿って、課題を解決するために自分がやったことをわかってもらえるように構成します。
目的は評価できること
研究は、やること・作ることを目的としてはいけません。
それ自体は手段であり、何かを評価するためにやることです。
やったり、作ったりした上で何を評価するのかが重要なポイントになります。
これらを意識して、目的は設定しなくてはいけません。
目的は研究によって達成された内容にする
また、発表における目的は、自分の研究で達成できたポイントにしなくていけません。
研究というのは長い目で見るものであって、今回の発表が全てではないでしょう。
大きな目的があって、その中に自分のやったことがある。
しかし、研究の大きな目的だけを語るのは「自分が何をするのか」が明確にならず、聞く側も何をしているのか把握できません。
きちんと、今回何を目的としたのかがわかるようにしましょう。
方法論が自分の研究の集約
方法論では、自分の研究の思想をきちんと語れなくてはなりません。
なぜなら、ここに自分の研究の新規性・独創性・重要性・アイデアなどが集約されているからです。
その主張を明確にしていることこそが、研究が評価されるかどうかに直結します。
ただ、作ったもの、やったことが何かを淡々と述べるのではなく、思想を語るようにしましょう。
「なぜ、その手法なのか?」
「なぜ、その指標を用いるのか?」
「なぜ、その部分に注目しているのか?」
きちんとした裏付けがなくては、研究として認められません。
実験と評価
実験と評価は、自分の研究の成果の妥当性を示すために重要となります。
この見せ方によって、研究の良し悪しが決まる、ということもあるでしょう。
目的を達成したことがわかる評価
一番重要なのは、自分が先に設定した目的をきちんと達成できているか評価すること。
その評価がなくては、研究自体の妥当性が疑われてしまいます。
逆に、それが評価できないような目的を設定してはいけないということでもあります。
一つの作り方として、評価から逆算して目的を設定するというのもいいかもしれません。
結果を明確にわかる形にする
結果は、きちんと伝わる形にしなくていけません。
グラフ・表の形になっているのが一番わかりやすいでしょう。
しかしながら、そのような定量評価がし辛い研究もあるかと思います。
その場合には、きちんと評価の流れがわかるようにしておきましょう。
グラフや表は、見ればわかることがほとんどですが、そうでない場合はまず伝わらないというのが一番怖いですから。
関連研究
関連研究の重要性
関連研究の重要性は、自分の研究テーマの妥当性を補強するという意味につきます。
関連研究のないようなテーマは、そもそもやる必要があるのか?という疑問が生まれてしまいますから。
関連研究を明示することは、そういった意味で重要です。
また、関連研究と自分の研究を比較して評価するということもできるでしょう。
関連研究と比べて優れている点、また劣っている点を明確にすることで、研究として価値のあるものになります。
結論
最終的な結論です。
ここまでくれば、ほとんど問題となることはないのですが、きちんと自分が何をして、どのような貢献をしたのかを再度述べるようにしましょう。
その上で気をつけることがいくつかあります。
得られた知見を明確にする
研究を行った上で、自分がどのような知見を得たのかを述べるようにしましょう。
何の知見も得られなかったものを研究とは呼べません。
聞かれたら答えられるから問題ない、という人もいるでしょうが、ここであえて述べておくことでよい研究であるという演出ができます。
最後までこだわるべき部分でしょう。
今後の展望
今後につながらない、そこだけで終わってしまう研究というのはつまらなさを感じさせてしまうものです。
「さらにこんな風に良くなる」
「この研究の最終的な終着点は・・・」
というような興味を引く展望を語れるのがいいでしょう。
まとめ
今回は、研究発表の資料で気をつけるべきポイントをまとめました。
実際には、研究以外の発表でも応用できることがいくつもあります。
ぜひ、参考にしてみてください。