いつ俺〜いつから俺ができないと錯覚していた?〜

社会人ブロガー。大手メーカーでソフトウェア開発をしている人。プログラミングは結構得意。

美容院のお姉さんにはもう少しネガティブになっていただきたい

 

この前、美容院に行ってきたんだけどね、美容師のお姉さんってすごいんだな。

なんかね、すげぇ明るいのね。

とにかく明るいお姉さんだね、あれは。

 

まあ、今日はそんな話なんだよね。 

 

美容院のお姉さんにはもう少しネガティブになっていただきたい

 

「こんにちはぁ!今日はカットということで!よろしくお願いしまぁす!(キラキラ)」 

 

僕は一瞬で理解したね。この人、すっげぇ苦手だって。

いやね、もう笑顔の輝き方がやばいのよ、このお姉さん。

これ、素でやってないよね。

営業スマイルだよね!?

そうだと言ってくれよ、まじで。

 

若干固まってしまった時点で、もうペースは向こうのもので、あれよあれよという間に、カットが始まってしまったわ。

 

思えば、もうこの時点で僕の敗北は決定していたのかもしれない。僕は、美容院という場が厳しい戦場だということを、この瞬間まで忘れていたのだから。

この時の自分の愚かさは、もうどんな罵倒の言葉を浴びせ続けても足りないくらいさ。

 

いやね、僕は美容院で喋るのが苦手だわ。なんか毎回似たような話をされるし、気を遣って話されている感じが苦手なんだ。だけど、気を遣われていた方がましだということを、今の僕なら主張するだろうね。

 

ともかく、お姉さんと僕の戦いの火蓋が切って落とされたわけ。

 

 

お姉さんは、何気ない感じで話を始めたんだよね。ホント何気ない感じでさ。

 

「いやぁ、最近すごく暖かくなってきましたねぇ」

 

でたよ。全国共通、どんな場所でも春が近づいてくれば、この話。暖かくなってきましたよねぇ、だよ。そこをあえて選んでいくお姉さんの技量はまだ計り知れないわけだが。 

 

僕は、「そうですねー」などと適当に流すことでやり過ごし、「あ、こいつ話すの苦手なコミュ症タイプだから、あんまり話しかけないであげよ」という気にさせる作戦を実行した。

 

この作戦は、これまでの経験からいくと、非常に成功しやすい無難な作戦だったわけね。今回もうまくいくはずだ、つってな。

 

 

そう確信していたんだ。

 

なのに・・・

 

 

「ですよねぇ!!あったかくなってきて、外でお散歩とかピクニックとかもいい季節ですよね!あ、でも朝はあったかすぎて寝坊しちゃいそうですよねぇ!!お布団気持ちよすぎて出たくないですよねぇ!!あーずっとお布団の中に入れたらいいのになぁ!!ってかんじですよねー!!」

 

 

いや、えっと、なんで急にこんなに反応がいいんだい。もう勢いよく話しすぎでしょう。もはや、いつ息継ぎしてるのか全くわからん。肺活量凄まじすぎないかな。寝すぎると肺活量ばっかり育っちゃうってまじ!?

 

しかも、お散歩したいんじゃなかったのかよ。布団好きのお散歩好きってなんですか。お布団にくるまったままお散歩する器用すぎる人なんですか。そうですか。

 

 

見事すぎる出だしに、僕は翻弄されっぱなしだったよね。

 

もう完全に主導権を握られてしまったよ。うん。

 

と思いきや、

 

 

「そういえば、学生さんですかぁ??」

 

 

話変えるスキル高すぎないかな!?

さっきまでお布団に夢中だったあなたはどこへ行ったんですか!?

多重人格かなにかなのでしょうね。

そうじゃなきゃやってられないぜ、まったく。

 

なんて思っている場合ではなく、ここでうまい返しをしなければ。

 

とはいえ、素直に「はい。学生ですよ」じゃまずい。

何がまずいって、

 

「あ!やっぱり学生さんですよね!!いいなぁ、青春だなぁ。学生さんのドキドキするような青春素敵だなぁ!!私ももう一度学生になりたい!!」

 

みたいな流れに持っていかれるんだ。そのくらい僕にだってわかる。

だって、このお姉さん絶対青春とか好きそうだもん。

 

だから、ここは理系の青春とは無縁な感じで乗り切るべき。

 

「はい。理系の大学院生なんですよ。だから研究ばっかりで」

 

 

ふふ。これで流れはぶった切ったはずだ。

 

 

 

 

そんな僕の考えは甘々だった。

 

 

「え!?研究!?すごーい!!!!どんな研究してるんですか!?てか研究って超かっこよくないですか!?すごいなぁ、すごいなぁ!!」

 

いやね、すごいとかっこいいの嵐ですわ。

すごいかっこいいすごいかっこいいすごいすごいかっこいいかっこいいすごいかっこいいかっこいいすごいっいすぎかいいこがごjづじえんっすあじぇぁ

 

いやね。まさかここまで全てをいい方向に取られるとはね。しかも、ここまで少ないボキャブラリで、どんだけ話すんだよ。ほとんどすごいとかっこいいしか言ってないよ。

 

いや、もうちょっとさ、「大変そう」とか「遊べなそう」とかネガティブに捉えてくれよ。

そんな僕のネガティブさが少しは伝わればいいのに。

 

 

 

「あ、なんか疲れた顔してますね。研究で疲れちゃったんですか!?無理はダメですよ!!しっかり寝ないと!!」

 

 

 

いや、ネガティブ伝わらない方が良かったな。ホント明るすぎないかい。

疲れているのは今この瞬間だと叫びたい。

そしてどんだけ寝るの好きなのだろうか。

 

 

けど、僕だってやられてばかりではいられない。ここは、雑誌を手に取ることで、それとなく喋りたくないんだぜアピールをする作戦を決行だ。

これで、僕の防御力は今までと格段に違うんだぜ。

そんな思いで、ファッション雑誌を手に取ったわけさ。

 

 

案の定、お姉さんは少し静かになったね。

 

 

ふふ、勝った。

 

 

 

 

そんな風に思っていた時期が、僕にもありました。

 

 

「あ、そーいう大人っぽいの着たいんですかぁ?けど、学生さんだし、ちょっと童顔だから、やんちゃな服着てもいいと思いますよぉ??いや、ホント絶対その方がいいと思うんですよ!!」

 

 

突然だったよね。準備なんてしてないからさ、そんな攻撃に耐えられないよね、僕の豆腐メンタルはさ。一瞬で崩れ去ったよね。

 

だって童顔ってさ。

そこ言っちゃいますか。

一切悪びれる感じもなく言っちゃいますか、お姉さん。

なんですか、その私すごくいいアドバイスしちゃったわーって顔。

 

そんな自信ある感じだとさ、僕が間違ってる気がしてきたよ。

お姉さんの自信をちょっとでもわけていただきたい。

 

 

もうね、どうやっても勝てる気しないよね。

ちょっとでも落ち着いていただこうとね、ネガティブの種みたいに話題を振ってもね、全部ポジティブな会話に花を咲かせてしまうからさ。

ひまわり畑にいる気分だよね。

お姉さんの笑顔がひまわりみたいに輝いてますね、つってな。

そんな歯の浮くようなセリフも今なら言えちゃいそうだぜ。

 

 

はぁ。

 

 

 

そんな中でね、なんとなく次の話題に変えようとしてさ、旬の話題を出してみたわけよ。

 

 

「そういえば、今就活やってるんですよねー」

 

 

ピクッ

 

 

僕は見逃さなかったね。

今まで完璧なまでの笑顔の城砦と化していたお姉さんの顔に、ちょっとだけ暗さが立ちこめたのを。

 

これだ。

この話題こそが僕を救う、メシア的なあれなのね。

 

 

「結構大変なんですよね。お姉さんはどうでした?」

 

 

これで、すこしは落ち着くはずだ。

そして、ちょっとはネガティブなこと言ってくれ。

 

 

「聞いてくれる?聞いてくれるんだよね!いやね、それがね!!第一志望だったとこ!!思いっきり落とされたわけね。いやね、私も悪いところはあったのかも、いやない!!完全に完璧だったわ!!ちょっと遅刻したこと以外。だからね、聞いてやったのよ。なんで落とされたんですかって!!そしたらね!!あばっばばばばばばっばgはkじゃfl;」

 

 

いや、落ち着けよ。

あんた、自分に自信ありすぎでしょう。いや、その自信僕もほしいとは思うよ、うん。

てか遅刻したこと以外ってさらっと言ったけど、落ちたの絶対それだろ。

そこが原因だよ、絶対。

とにかく明るいことだけはわかったからさ、ちょっと落ち着いて考えてみてくれって。

 

 

「でまあ、ここ受かって超嬉しかったから気にしてないんだけどね!!キャハ☆」

 

やっべー、ポジティブ。

殴りたい。

 

 

いや、ここは紳士として落ち着こうではないか。

後ろにはハサミを持ったとにかく明るい多重人格のお姉さんだぜ。

勝てるわけないよなぁ。

 

 

 

でまあ、色々あったけどさ。

 

 

 

 

 

髪型最高ですわ。

神髪型ですわ。

 

お姉さん、あんな勢いで喋っててもこんなにうまくカットできるんだね。

なんか、色々あったけどね、最高だよ、うん。

 

ポジティブ多重人格マシンガントークお姉さんマジ天使。

素敵なお姉さんに感謝です。

 

 

 

 

 

はぁ。

 

次行く美容院、変えよっかな。