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高専から大学に編入して感じた大学教育の良い点・悪い点と大学生活で大切なこと

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僕は、高専から大学に編入し、現在は大学院に通っています。その中で、「高専で専門分野を学ぶ」のと「大学で専門分野を学ぶ」ということに大きな差を感じました

 

今回は、まず高専と大学での教育の違いについて説明し、その上で、大学教育の良い点と悪い点について話をし、最後に大学生活を送る上で大切なことについてまとめたいと思います。

 

ただし、今回は理系の学部における教育のみを見てきた内容について話します。文系の学部がどうなのかについては触れていません。

 

 

高専とは

ここまで「高専」というワードを多用してきましたが、「そもそも高専って何?」という人もいるかもしれませんので、最初に説明しておきます。

 

高専とは高等専門学校の略称で、中学校卒業時から5年間の教育を受ける機関です。その名の通り、専門的な技術系の教育を高校の年齢から受けることができ、実際の社会で通用する技術者を育てることを目的としています。

 

特に大きなメリットとなるのは、「大学受験」に縛られないことかなと思います。普通高校で学ぶことの大半は、大学受験の準備のためという意味合いが強く感じます。たしかに、基礎教育として重要な面もあるかもしれませんが、必要最低限に絞ることは可能です。

 

高専では、その必要最低限に絞られた高校教育の内容と、空いた時間に並行して大学で学ぶような専門教育を受けることができます。高校生の時期から、専門的な教育を受けることができるのは、非常に大きなメリットですね。

 

高専と大学の教育で感じた差

根本的な教育の考え方

高専は教授が「学ばせる」ように仕組んだ教育

まず根本にあるのは、学生が学ぶように仕組んでいるということでしょう。 聞こえは悪いかもしれませんが、これはとても重要なことです。

 

高専で受ける講義には、演習や、実験が非常に多くあります。また、通常の座学のような講義でも演習の時間を必ず取っていますね。それに加えて、課題やレポートも、もちろん出ます。結構ハードであるように感じますが、これは最終的に自分の力になることです。

 

このように、ある程度強制的にアウトプットする機会が与えられるのは、大きな特徴でしょう。

 

大学は学生が「学ぶ」ことを前提とした教育

一方で、大学は学生が主体的に学ぶことを前提とした教育となっています。それだけ聞くと、非常に良い印象ではありますが、そうとも言えないのが現状です。

 

主体的に学ぶことが前提であるので、講義は基本的に学生が受け身となるスタイルになっています。ですから、講義の時間中にアウトプットを行える機会は極端に少ないです。 教授の知識のお披露目会に近い形になっていると言えます。

 

また、試験内容も講義で学んだ枠を超えた問題が出題されることが多々あります。これ自体は悪いことではないのですが、どこまで勉強すればいいのかわからない、というのは学生にとって不安なことではありますね。

 

カリキュラムの質

高専は時間をかけてじっくり学ぶ

高専は、その大きなメリットである「高校の年齢から専門教育を受けられる」ということを最大限に生かし、基礎を長くしっかり学べるカリキュラムが組まれています。最終的に、現場で活躍できる技術者になるとしても、小手先だけのものではなく、基礎となる概念をきちんと理解できることが重視されています。それに沿って講義の内容も、「なぜ?」の部分が求められる形式になっていますね。

 

このようなカリキュラムを組むことで、最終的に高学年になった時に基礎で悩むことがなく、実用的・応用的な内容を学ぶことができるわけです。高専では、準学士(短期大学卒業)の資格を取得できるのですが、講義内容としては大学の講義で学ぶことのできる範囲まで、学習可能です。これは、基礎がしっかりと身についているからこそ、応用部分が効率よく学べる、というところから来ているかなと思います。

 

大学はテンポよく大量に学ぶ

大学は、高専とはまた異なり、講義の進むスピードが非常に速いです。これは、僕自身が高専出身で、かつ大学で学んだ内容をすでに学んでいたので、実際に経験してみてわかりました。高専ならば1年(春学期から秋学期まで)かける内容を、大学では半期で終えるというのがほとんどでした。そのため、1回1回の講義のスピードが速く、全てを理解しながら進んでいくのは大変なのではないかな?という印象を受けました。

 

講義中に演習をしっかり行えないのも、こういったところから来ているのかな、と思います。完全に個人で自主学習を行うことが前提となっているわけですね。しかし、講義で個人学習を強制されるわけでもないので、自分で考え、何を学習するのかまで決めなくてはならない。正しいことかもしれませんが、学生に対する負荷が大きすぎるようにも思います。

 

おそらく、教授に個人的に聞きにいけば、教えてくれるケースもあるでしょうが、全ての学生がそれをするというのもそれはそれでコストでしょう。教授も忙しい人が多いですし。

 

この辺りを少しサポートするだけで、学生自体はかなり学びやすい環境になるのにな、と個人的には思います。

 

研究の質

高専は実用寄りでアプリケーション依存の研究が多い

高専は、元々が社会で通用する技術者を育てる、ということが目的の教育機関です。そのため、研究も技術者としてのスキルを磨きながら実用的なことをする、という面が強いです。学術的なことを学ぶことも、もちろんありますが、あまり割合が高いとは言えないでしょう。

 

理論をベースとして研究を行う、というよりもアプリケーションがあって、それに対してどのような理論を適用可能か、という方向性が多いです。それ自体は、技術者として正しい方向性だとは思います。ただ、研究者という観点では、物足りなさがあるかもしれません。

 

大学は学術研究や実用研究まで、それぞれを深く学べる

大学は、教育機関でありながら、研究機関としての側面が強くあります。ですから、研究も学術的、あるいは社会的に価値のあることをやろうという強い目的意識を感じます。研究をする上で、自分のやっている研究にどのような価値があるのかが問われる世界です。

 

ですから、自分がどのような技術を身につけたかが、重要ではありません。そうではなく、自分が身につけた技術で、どのような価値を生み出すことができるのかが求められます。技術者ではなく、研究者を育てる環境として素晴らしいだけでなく、技術者が技術だけで終わらず広い視野を持つことにも繋がる、非常に良い環境であると思います。

 

大学教育の良い点と悪い点

ここで、これまで話してきた内容をベースに、大学教育の良い点と悪い点をまとめてみたいと思います。

 

良い点

主体性が身につく

基本的に、大学は学生が行うことに制限をかけることもなければ、強制してやらせようとすることも多くありません。ですので、何事も自分で考えて行わなくてはならないわけです。その中で、主体的に行動できるようになっていくことはあるでしょう。

 

ただし、これは大学の性質を良い方向に捉えたものです。もちろん、デメリットもあります。それについては、後で話をします。

 

自由に勉強ができる

先ほど話した通り、行動の制限や、強制される内容はあまり多くありません(もちろん実験のレポートなど、ある程度はあります)。ですので、自分でやりたい勉強を行うことができます。

 

特に、大学は研究機関であるので、文献や資料が多く揃っています。さらに言えば、その分野を極めた教授達がいるわけです。このような環境を最大限に活用すれば、自分のしたい勉強をみっちりとすることができるでしょう。

 

高いレベルの研究ができる

大学では、質の高い研究を行うことができます。学生にとって一番のメリットはここでしょう。設備としても、意識としても、最高の環境ではないかなと思います。

 

先述の通り、技術の持つ価値の部分を意識して学ぶ機会が多くあります。また、技術寄りな研究を行っている研究室や、企業との共同研究などを行う研究室であれば、技術の部分も学ぶ機会はしっかりあるでしょう。

 

技術も、その技術が持つ価値も、しっかりと学ぶことができます

 

悪い点

自分で行わなくてはならないことが多い

先ほど、主体性が身につくというメリットを話しましたが、裏を返せば自分で判断しなくてはならないこと、自分で行わなくてはならないことが増えることになります。もちろん、重要なことではありますが、いきなりこれを求めるというのも酷なことでしょう。

 

現状では、教授と学生、つまり教育者と学生との距離が離れているように感じます。それが、少しずつ改善されれば、教育機関として良くなるのかな、と思います。

 

基礎が身につかない恐れがある

大学の講義が進むスピードは非常に速いです。ですから、その分野を学ぶ上で最も重要な基礎の部分が身につかない、という恐れがあるでしょう。

 

実際に、僕の研究室に新しく入ってくる学生を見ると、基礎ができていない人が多いです。もちろん、基礎がしっかりしている学生もいるわけですが、それがかえって話を難しくします。基礎ができている人はどんどん進むのに、それがない人は全く進んでいかない。進度に差ができすぎて、教えるのも難しくなりますね。

 

研究が好きでないと苦しい

研究機関として素晴らしい、という話をしましたが、その分研究で求められるレベルは高いです。ですから、研究が好きでないとかなり苦しい思いをします

 

特に、大学院に行こうとするなら、研究が好きでないとどうしようもないです。これはこちらの記事でも話をしています。

 

www.ituore.com

 

大学生活を送る上で大切なこと

大学生活を送る上で大切なのは、大学はあくまで自分が学ぶ場所であって、何かを教えてくれる場所ではない、ということを理解することでしょう。自分から動かなくては、何も得ることができませんから。

 

しかし、自分から動こうと思えば、非常に価値ある内容を学ぶことができます。大学の図書館や、研究室には、質の高い文献や資料が多くあります。さらに、教授に直接話を聞くことができれば、講義では聞けない範囲での勉強も出来るでしょう。さらに話が進んで、研究室に遊びに来てもいい、というようになれば、学ぶ機会はより増えますしね。

 

どのようなことをするにしても、自分から動く。それだけは、意識しなくてはならないことですね。

 

まとめ

今回は、大学の教育について、高専から編入した立場として話をしました。大学という場所は、何かを教わる場所というよりは、自分から学ぶための場所ですね。 そのことを意識して生活すれば、自分が成長する機会はいくらでもあるでしょう。